「1923関東大震災朝鮮人大虐殺を記憶する行動」および「ふぇみ・ゼミ&カフェ」からの「声明」への応答」
昨年2023年10月30日に〈1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動〉が発出いたしました「【声明】故岡正治氏の性暴力加害問題を受けて」に対し、長崎人権平和資料館(旧岡まさはる記念長崎平和資料館)理事会より、「応答の声明を当資料館のウェブサイトにて発表いたしました」と、真摯なご連絡をいただきましたので、ご報告いたします。
(以下、全文)
「1923関東大震災朝鮮人大虐殺を記憶する行動」および
「ふえみ・ゼミ&カ フェ」からの「声明」への応答
平和活動家・牧師であり長崎市議会議員も務めた故・岡正治が生前に性暴力に及んでいたことを受け、その名を冠してきた特定非営利活動法人岡まさはる記念長崎平和資料館は、2023年11月19日の総会による議決を経て、館名を特定非営利活動法人長崎人権平和資料館に変更いたしました。
この性暴力事件への当資料館理事会の対応について、2023年10月30日、「1923関東大震災朝鮮人大虐殺を記憶する行動」と「ふえみ・ゼミ&カ フェ」による声明が発表されました。その中では、2020年の被害女性の告発にも関わらず、真相究明、公表、謝罪などを行ってこなかったことが指摘され、組織としての責任を取り、今後は被害者に対して誠心誠意対応し、館名や展示を見直すことが強く求められています。
当資料館は、これらの声明を重く受け止め、これまでの対応を振り返り、ここに応答させていただきます。
応答の仕方や内容について理事会の中で調整するのに時間がかかり、このように応答が遅くなったことについて深くお詫びいたします。
まず、これまでの経緯を説明します。
理事会の中には2020年の時点で被害者の証言を知った者がいたにもかかわらず、被害者の方に心を寄せることなく放置してきました。そして、2023年5月、この問題を知ったある会員の方から放置すべきではないと指摘を受けました。その後協議を重ね、7月末、理事で相談しその会員の方に被害者との面会と聞き取りをお願いすることになり、8月下旬、聞き取りが行われました。
証言内容は理事会に共有され、その詳細にわたる証言の内容を聞き、被害者が2020年に行っていた告発以上の被害もあったことを知りました。その内容は大変深刻なものであり、私たち理事一同は大きな衝撃を受けました。
その後、9月22日の理事会で、館名の変更や事実の公表などを含む今後の方針を話し合いました。
被害者の方と会った会員の方にはこの理事会での結果をお伝えし、被害者の方に直接謝罪文を渡していただきました。被害者の方は謝罪を肯定的に評価してくださいました。以降、会員や受付ボランティアの皆さんへの説明会や総会を開催しながら、この理事会決定に沿って対応してきているところです。
問題を放置した背景には、性暴力がどれほど深刻な人権侵害であるか、サバイバーが声を挙げることがどれほど大変なことなのかという認識の欠如があったと考えます。サバイバーの声を聞き、受け止めることの重要性や責任を理解できておらず、当事者意識が明らかに不足していました。
また、偉大な人権活動家であったと自分達が仰ぎ見てきた人物が、性暴力という人権侵害に及んだことを真摯に受け止めきれなかった点は厳しく自らに問い続けなければなりません。
ふえみ・ゼミ&カフェが声明で「加害者の属性・思想・ジェンダー・セクシュアリティなどにかかわらずあらゆる性暴力加害を許さない」という立場を明確にされたとおり、私たちも加害者の「功績」によって性暴力を過小評価することがあってはならないと、常に自身を振り返りたいと思います。
続いて、2023年9月17日の国際シンポジウム「レイシズムを記憶する意義 ―関東大震災虐殺ミュージアムを設立するために―」の当資料館理事の登壇についてです。
理事全員が被害者の方の証言をお聞きしたのは8月末で、上述の対応を決定したのはシンポジウム後の9月22日の理事会でした。本来であれば早急に理事会で登壇について協議し、辞退させていただくべきでした。それができなかったのは、性暴力加害者の功績を発信するという行為の問題性と私たちがとるべき具体的な対応を、当時は十分に認識・想定できておらず、臨時の理事会を開くなどの迅速な対応に踏み切れなかったことにあります。
当資料館の理事を招いてくださったのは、植民地支配の責任を追及するという点で当資料館の活動に共感してくださったからでした。それにもかかわらず、当資料館がその名前を冠する人間が人権侵害を行っていたということを知りながら、それを伝えずに登壇しました。このことで貴会の信頼を裏切り、シンポジウムに参加した方々に対しても不誠実な対応であったことを深くお詫びいたします。
当資料館は2023年10月10日以降休館しており、2024年4月1日の再出発をめざして準備を進めています。これまでに館名から加害者である岡正治の名前を除して長崎人権平和資料館に変更しました。展示については、岡正治を記念するものは取り除き、ジェンダーの視点を盛り込んだものに変えていこうと、展示検討会を立ち上げ、作業を進めています。
私たち資料館理事会は、これまでの行いを問い直しながら、「被害者の痛みを心に刻み」という当資料館の趣旨に改めて立ち戻り、被害者の方の思いに寄り添う努力を続けていきます。そして、社会正義や人権を重んじる社会運動の中にも根強く存在する性差別に対して、常に自覚的であり、そして改善のために発言・発信・行動していく資料館をめざしていきます。
また同時に、今後も社会的責任を果たしていく過程において不可欠な、透明性のある組織運営を目指します。引き続き、当資料館への提言や意見を寄せてくださるようお願いいたします。
2024年1月22日
長崎人権平和資料館(旧名称:岡まさはる記念長崎平和資料館)理事会
参 考
〈1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動〉
【声明】故岡正治氏の性暴力加害問題を受けて
「ふぇみ・ゼミ&カフェ」
故岡正治氏による性加害事実の公表を受けての声明文