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運営主体 一般社団法人東アジアピースアクション (1)東アジアでの真の和解と平和構築のための国際交流事業を行う。 (2)近現代の歴史的な事実に向き合い、加害と被害の双方の立場を乗り越え明るい未来を築いていく事を目的に若い世代を中心に活動をする。 寄付サイト:https://syncable.biz/associate/peaceaction

2020年6月23日火曜日

反復を許さないための虐殺の記憶/朝鮮人虐殺をなかったことにしたい人たち

ブログ日刊イオより

https://www.io-web.net/ioblog/2020/06/25/81850/

「1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動」が主催するオンライン講演会「朝鮮人虐殺をなかったことにしたい人たち」が6月23日、都内の書店で行われた。同講演会は生配信され、閲覧者数が約70人、会場にも十数人が足を運んだ。

 

講師を務めたのは、『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』、『TRICK 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』の著者で作家の加藤直樹さん。


加藤さんは、東京・大久保の出身。学校や街に多様な人がいることが当たり前の環境で育ったが、朝鮮人虐殺の歴史を知り、衝撃を受けたという。「いろんな人が住んでいたと思っていた街で、民族の違いで人を殺していたということと、殺された人たちの子孫と、殺した人たちの子孫たちが、この街で生きていることに気づき、自身の東京に対する理解に朝鮮人虐殺の事実を組み込まないと、東京を『自分の街』としてわかることができない気がした」(加藤さん)。
東京のさまざまな人たちの身に起きたこと、私たちの社会で起きたこととして、日本人、在日、ニューカマーなど様々な人たちが共に記憶していかなくてはならない「負の記憶」として語っていきたいという思いが、加藤さんを『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』の執筆に向かわせたという。

加藤さんは最初に、1923年の関東大震災時に起きた朝鮮人虐殺について内閣府中央防災会議の報告をもって説明し、「内閣府がまとめた控えめな報告として虐殺について書かれているので、虐殺が起きたということについて日本の歴史学の世界でおおよそ否定する人はいない」「左翼や保守派などの(主義主張の)問題ではなく、歴史学者の名に値する人は、虐殺があったということをいろいろな所で書いている」ことを、朝鮮人虐殺の大前提として話した。


そして、日本社会で、「虐殺否定論」がここ十数年の間に出てきていることに触れ、どういうロジックで「虐殺はなかった」と言っているのか、また、「なかった」という主張だけでなく「なかったことにしようとする動き」にどういう意味があるのかについて語った。その内容を以下にまとめる。

「虐殺はなかった」のロジックと影響―

2009年、ノンフィクション作家であり日本会議のメンバーを務めている工藤美代子さんという右翼言論人が「関東大震災朝鮮人虐殺の真実」という本を出版した。そのなかで、震災直後の流言記事を出したり、『朝鮮人の怒りが天皇に向かないように「朝鮮人暴動説」を日本政府が否定し、自警団に身を引いてもらった』という旨の新説を唱えたり、資料を都合よく切り刻み引用するなどのあらゆるトリックで虐殺否定論を展開した。震災当時の記憶を伝える人がいなくなった頃に「虐殺はなかった」と主張したのが同書だ。

虐殺否定論が及ぼした影響は、ネット右翼にとどまらず、草の根右翼や政治家にも広まっている。2014年には、当時、自民党の文部科学部会長を務めていた赤池誠章参議院議員がブログで「根拠なき流言飛語によって多数の無辜の朝鮮人を虐殺したというのは信じられない」と発信し、工藤さんの著書を称賛した。

2017年からの小池都知事の関東大震災朝鮮人虐殺追悼式への追悼文の取りやめも、同年3月に古賀俊昭自民党都議(当時、故人)が「あの追悼碑には、流言飛語により日本人が虐殺をしたというヘイトスピーチが書いてある」と、工藤さんの著書を掲げて虐殺否定論を展開し、小池都知事に追悼文の取りやめと追悼碑の撤去を提起したことが背景にある。また、古賀議員にそのように働きかけたのは、2009年に結成された排外主義団体「そよ風」だ。虐殺否定論をもって、草の根右翼の動きも強くなり、政治家たちがあのような判断を下しているという問題が起きている。

「なかったことにしようとする動き」の意図―

2017年から「そよ風」は、毎年9月1日に横網町公園で行われる関東大震災朝鮮人虐殺追悼式と同日同時刻に、同じ公園内で朝鮮人虐殺の歴史を否定する発言を伴う集会を行っている。東京都は「トラブル」を回避するため、昨19年末、両者に「誓約書」の提出を要求した。これこそが、日本の負の歴史の展示物や追悼碑をなくす活動を熱心に行っている「そよ風」の目的だ。「そよ風」はブログでも、理屈のようで理屈にならないことを出したり引っ込めたりして、「なぜ虐殺を否定できるのか」については説明する気がない。つまり、「何が事実か」には関心がない。

事実に基づいた主張のない草の根右翼勢力に残るのは「欲望」であり、それは一言で、虐殺の記憶を消し去ることを目的としている。


なぜ、ここまでして朝鮮人虐殺を「なかったことにしたい」のか。それは、日本のナショナリズムが非常に歪んできているからだと思う。本屋に行けば常に嫌韓本が積み上げられているように、日本の反動的ナショナリズムというのが民族差別をガソリンにして回っているように思える。「このように民族差別、蔑視を煽った結果が、関東大震災時の朝鮮人虐殺だ」と言われると、彼らたちの反動的なナショナリズム宣言ができなくなるので、屁理屈を押し通してでも、虐殺をなかったことにしたいというのが彼らの欲望なのではないか―。

内閣府の中央防災会議報告は、関東大震災から導き出されるのは過去の反省と民族差別の解消の努力だと結論付けているが、赤池議員は日本政府としてのこの教訓を否定したうえで「震災時に必要なのはテロ対策」と言った。現に、2011年の東日本大震災時、「外国人が窃盗をしている」という噂を聞きつけた右翼団体が鉄パイプやスタンガンを持ち、宮城県石巻市に乗り込んでいるのだ。

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最後に加藤さんは、「虐殺の記憶を手放さないということは未来に繰り返さないために必要であり、それを消し去るということは過去の過ちの反復を許すということ。虐殺否定の試みに対して社会的に反撃していく必要がある」と話した。
インターネット上で、関東大震災の震災直後の流言記事を出してくるネット右翼がだいぶ減ったことや、2017年4月に内閣府のホームページから中央防災会議報告が削除されそうだという記事が出た際、抗議の電話やメールが殺到し、一週間もたたずにホームページの報告文が復活したこと、また、小池都知事が追悼文を取りやめた際、圧倒的な抗議があったなどの事例を挙げ、否定論に対して反撃する力もどんどん育っていることが希望だと語った。

「右翼団体の水面下での働きかけがある日急に浮上した時に、幅広い人たちが反論できる雰囲気やネットワークを普段から作っていくことが大事」だとし、「『両論併記』や『諸説ある』などという構図に持って行かせず、歴史学の常識からすれば成り立たないような主張に潜むトリックを暴いていくという構えで否定論と向き合わなくてはいけない」と呼びかけた。


「1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動」は先月から、月に一度の連続学習会を行っている。次回は7/30(木)金富子さん(東京外語大学教授)を招いての学習会を予定している。(蘭)